営業二課の田島君と上野さん – ゑひもせす②
「……(謝るつもり、だったのに、な)」
「ひーなーたっ。なんかしょげてるらしーじゃん?」
「ちょ、どこからそんな話」
「今日あんたが一緒だった稲葉さん。どしたよー、やっぱなんか悩み?」
「う、あの人かぁ…………や、たいしたこと、ないよ」
「……ふぅん。
ねぇねぇ、ならどうよ景気づけに一発、今週末とか」
「お、いいねぇ……って、もしかして合コン?」
「もっちろんよー、いいの呼ぶよぉ?」
「うー……合コンは、いいややめとく」
「んー……あたしがセッティングするんだから、変なのはちゃんとハジくよ? それでも?」
「……それでも。しばらくはいーやぁ、ごめんね」
「んんー……あんたが気にすることじゃないのに……。
って言っても難しいかぁ、んじゃあ女子会の方向で声かけてみるよ、来週以降で」
「……ありがとー」
「おう、気にするな。……あっ、丹羽さーん(ぱたぱたぱた……)」
「(元気だなぁ……。
さて、私も帰るか……、廊下の自販機に入ってた新しい紅茶でも試してみよっかな)」
「あ、これこれ……。っと、あれ?
……え? うそ、なんで? なんで出ないわけ?」
「(チャリン)50円足りてませんよ(ピッ、ガコン)」
「……! ほ、本当だ恥ずかしい……100円玉と50円玉間違えて入れてた……、って、」
「はい、どうぞ」
「(よりにもよってここで田島君っ)」
「飲まないんですか?」
「あ──飲み……ます。ってか、50円」
「いえ、結構です。私が買うのに邪魔だっただけなんで。……どいていただいても?」
「あっごめんなさい」
「失礼」
「(なんか……絶妙にこっちが謝罪とか感謝しようとするタイミング潰す人だなぁ)」
「(ガコン)……。何か?」
「あっいやっ何でもっ──
(じゃない、ちゃんと謝らないと!!)」
「お~、お疲れ。珍しい組み合わせだな」
「──越前さん(会釈)」
「……あ、どもです」
「ってそっか、田島、配属替えになったんだっけな」
「本来のところに戻っただけと言えば戻っただけですけどね。ってか越前さん、また裏で暗躍してたでしょう」
「人聞き悪いなぁ、俺は同期の素朴な疑問に答えただけだぜ。それとも何か、聞かれて都合が悪いことでもあったんか?」
「どう聞いても心当たりある人の受け答えじゃないですかそれ……そりゃまあ、今のところは不都合ないですけど」
「だろー?」
「トータルでどうかはまだわかりません、よ?」
「……?」
「っあ~、ひなたちゃん、こいつ俺の後輩なんだ。よろしくしてやってな(ぽんぽん)」
「あぁ、それで……」
「(こほん)中高と一緒でした。──越前さんとそちらは?」
「(にやにや)」
「あ、父のところによく来てて、その時に」
「俺の師匠と上野先生が古い付き合いでなー」
「父は動物関係ですけど、越前さん達は人間の方が専門でしたよね」
「そうそう」
「……なるほど、この業界、狭いですからね」
「まったくだ」
「……あれ? 越前さんの、後輩ってことは」
「んだんだ、上野先生の後輩にもなるなぁ。ひなたちゃんのおじいさんが理事やってるあそこ」
「ですよね? (あそこを出てるなら──どうしてストレートでうちの会社に入らなかったんだろ?
……って、興味ないない、)」
「どーした急に首振って」
「なんでもないですっ、帰りますっ」
「おう、気をつけろよ~。最近狼が出るらしいからな~」
「? 狼型のミュータントですか?」
「はっはっは、さ~なぁ。心配なら隣の男に送って貰えよ」
「越前さんっ」
「(仲、いいんだなー。なんかこういうの意外)」