営業二課の田島君と上野さん – ゑひもせす②
「…………──」
「どしたのひなた、そんなにコーヒー混ぜ続けて。溶けない砂糖でもあった?」
「! みっ、見てたの!?」
「じっと観察してたわけじゃないけどねー、あたしが行って戻ってくるまでずっとその姿勢だったっぽいし? で、どしたのよ」
「やぁ……たいしたことでは、ないんだけど」
「うん、亜貴ちゃん様に言ってご覧」
「今月から経理に入った眼鏡の男の人いるでしょ?」
「あぁ田島君ね? あのイケメンがなんか?」
「い、いけめん……かぁ?」
「割と? あんた趣味悪いからねぇ」
「ほっといてよう。……や、あの人なんか、やたらとこっちを見てるような気がしてて」
「おっ恋か? フォーリンラブか?」
「や、やーめーてー!!」
「そんなに嫌がることかねぇ。……イケメンに見られてるなんて喜ばしいじゃないの」
「仮にイケメンだったとしても、テレパス彼氏にするとかありえないから」
「え、そこ引っかかる? フロアにいる限り抑制されてるんじゃん」
「彼氏にしたら、社外でも会うでしょ!! ……や、まぁ、私だって社内の男子には正体バレてるからお断りだろうけどさ」
「そーかぁ? あんたの能力って筋力増強だけじゃん。かえって常人のオトコのほうが抵抗覚えそうだけど」
「う、い、いいよもうその話は……。っていうか、私田島君? に何かやったのかなー、って、考えてるんだけどずっと」
「うーん……ひなたには心当たりないんだよね?」
「(──みたいな話をしたのが三月で、その後、見られてる感じはなくなったけど、怒濤の嫌味がやって来たんだっけ……。
やっぱり何かやったのかなー私、そう考えるとスッキリする気がする……けど原因が思い当たらない。……でも、
助けてもらったのは事実なんだし、それはちゃんと感謝しなきゃ)」
「おーい、ひなたー。いつまで混ぜてんのー」
「(で、でもさ、確かに着崩れしてるスーツが朝帰りにしか見えないってことには異論はないけどさ。
……伊代さんに暗示掛けるにしても、どてらとスウェット、はないんじゃないのー!? とんだ濡れ衣っていうか、恥ずかしい衣装着せやがってあの田島ーっ!!)」
「わっ。ひなた、飛ばしてる飛ばしてる」
「えっ、あっ、ごめん亜貴ちゃん」
「いいってことよ、ほらナプキン。
……どうしたん、もう混ざってるでしょそれ。ってこんなやりとり、最近もやったよーな?」
「う、うん……いやちょっと考え事が。な、ナンデモナイヨ……
(どてらの話、もしするとしたらその前からも説明しなきゃいけないわけで、いくら亜貴ちゃんでも、それは無理ー!!)」
「ほう、恋の悩みかね? 亜貴ちゃん様に打ち明けてみるがいいよ?」
「ち、ちっがーう!」
「むきになって否定するとは怪しいなぁ。相手は誰だね?」
「本当に違うっていうか、わ-! そんなんじゃないからー!!」