類を以て集まる
アメリカ、東海岸の冬の夜。ある路地裏では、切れかけの街灯が最後の力を振り絞るかのように点滅している。
そこに、複数の人影があった。
どうやら、一人を取り囲んで揉み合っているようだが……。
「ジジイわかってんだろ? さっさと置いてけよ」
「駄目じゃ、これは大事なもの、渡すわけにはいかん!」
「だぁから言ってんだよ。早く諦めた方が身のためだ、誰も助けになんか来ねえぜ?」
「おっと、それは聞き捨てならないねえ」
闇を女の声が切り裂いた。続いて、ぴしぱしと何かを打ち据える音。
「ぐっ……」
「なんだ、てめ……」
チンピラどもはセリフを最後まで言うことなく地に伏せる。
点滅する光の中、姿を現した女は、やれやれ、と革ジャンの肩を払って伸縮式の警棒を収納した。
「旅の人かい、悪いね、うちの街でこんな目に遭わせちまって。ここいらのもんじゃないようだが、ブタ箱で年越ししてもらうとするかね」
老人は驚いた。よくよく声を聞けば、自分とさほど歳も変わらない老女ではないか。
……ああ、そういうことか。
「聞いたことはありますぞ。ティーブレイクタウンに住まう、子供たちの味方……」
「ははッ、あたしも有名になったもんだね。あんたほどのお方にそう言われるとは」
老人はハッとして、自分の抱えていた白い袋、そして赤い姿を見下ろした。
女性はポケットからチャリ、とキーホルダーらしきものを出す。
「有名な相棒が見えないようだけど。どうだい、足がないなら手伝おうか」
「はは、それには及びませんぞ。少々広い場所に待たせているのです。おかげで不覚をとりましたが、助かりました、もう大丈夫でしょう。あなたも今宵は、待ちかねておられるご家族の元に戻られるとよろしい」
「ふむ、ではそうさせてもらおうかね」
ちょうどその時、パトカーのサイレンの音が夜を切り裂いて近づいてきた。チンピラたちを回収してもらうため、あらかじめ呼んでおいたものである。
老女がふとそちらに意識をやった瞬きほどの刹那に、赤い服の老人の姿は消え失せていた。
ただ、点滅する明かりの中に、綺麗にラッピングされた袋が一つ。
彼女はそれを拾い上げる。
「ふん、粋なことするじゃないかい」
添えられたカードの『コンホーテン夫人へ、感謝を込めて』の文字に、ヨハンナはニッと口の端を上げた。